見直しの住居学11:長持ちする家をつくろう

長持ちする家をつくろう

年月が美しく刻まれる愛着の湧く家が長持ちの秘訣

日本の住宅の建て替えサイクルは28年というデータがあります。何も考えないで家を作ると、30年の寿命もない未来の粗大ゴミを一生懸命建てることになってしまいます。いま建て替えている住宅は、老巧化による構造的な問題よりも、家族構成の変化に適合できなかったり、設備が壊れたりすることが原因している場合が多いようです。あらかじめ設備の更新や間取り変更への配慮があれば、リフォームで済むケースもたくさんあります。

ところがリフォームが可能でも建て替える場合が少なくありません。家に愛着がないからでしょうか。愛着があれば簡単に取り壊す気にはならないはずです。私は愛着のわく家づくりを目指し、そのために自然の素材を使っています。

無垢の木や和紙、珪藻土の壁、自然の塗料などを使った住まいは、経年美化といって年月が経っても汚くなりません。というより味のある汚れ方をしてくれます。小さな傷も染みも、家族が暮らしてきた年輪となります。また自然の素材の住まいは、解体しても多くは土に還りますから、環境を考える上でも重要な意味があります。


【写真左】リビング。床はナラ、壁は珪藻土、天井はくりこま杉を使用。
【写真右】リビング。べい松、珪藻土を使っている。

家族の変化に柔軟に対応するには、木造の昔ながらの軸組工法が適しています。柱を残しながら、改築や増築が比較的簡単にできるからで、きちんと補強すれば1~2本の柱の撤去も可能になります。設備の更新のためには配管類を壁に埋め込まないことです。
配管類を通す竪穴を維持管理しやすい場所に設け、要所には点検口を設けておきます。設備機器には寿命がありますから、将来必ず取り替えるものだという認識を持ち、準備しておくことが大切です。貴重な木材資源を使うのですから、愛着の湧く住まいをつくって長持ちさせ、次世代につなげていきたいものです。

長持ちする家の施工事例をご紹介


【写真左】カナダ杉を床と天井に使用したリビングです。
【写真右】床、天井に信州カラ松を使っています。


【写真左】床はカラ松、天井は杉、畳は伊藤園のお茶殻をリサイクルした「さらり畳」を使用しています。
【写真右】自然素材にこだわってマンションを民家のイメージにリフォームした実例です。