見直しの住居学2:新感覚の和室
現在では、和室を計画することは残念ながら少なくなってしまいましたが、和室には洋室にない使い勝手のよさがあります。ベッドを置いた洋室は寝室という用途に限られてしまいますが、和室の場合は、布団を押し入れにしまい、掃除機をかければ、朝食の場や茶の間に変わり、お客様を通すこともできます。ひとつの部屋に何とおりもの使い方があるという点で、和室には洋室にない「融通性」があります。
昔からの日本の和室の使い勝手のよさをもう一度見直す必要がありそうです。和室といっても、決まりきった化粧柱に鴨居、長押、竿縁天井といった和室本来の意匠にこだわることはありません。現代的に割り切って、畳敷きのファジーなスペースを計画すると考えれば、使い方も住まい方ももっと楽しくなるはずです。
たとえば、畳のリビングもあります。リビングといえばフローリングと決まっているわけではありません。最近の若い建築主で畳の好きな人がいて、リビングダイニングを12畳の畳敷きにしました。座って低く暮らせるので、
天井が実際以上に高く感じられます。大きな掘りこたつを真ん中に設置し、夏は堀座卓として使うので1年中使っています。冬も夏もこの掘りこたつを中心にして生活しています。
お客様が何人きても、座布団さえ用意すればそれで済みます。さらに畳に座って目線が低く暮らせるので、12畳の部屋がそれ以上に広く感じるメリットもあります。天井も実際よりも高く見えます。床暖房をしなくても暖かく過ごせます。畳のリビングはこれからの小さな住まいにはおすすめだと思います。
若い人の住まいでは縁のない畳もよく使います。リビングのコーナーに畳のスペースを計画するような場合は縁なしの半畳サイズの畳を使うと和風になりすぎず、洋風のリビングに感じよく馴染むようです。4畳半で9枚の畳になるので、コストはちょっと上がりますが畳表の目を互い違いになるように敷き込むと市松模様のとてもおしゃれな畳スペースになります。
寝室を和室にするケースも最近は多くなっています。特に若い建築主の場合に多いのは、布団の上げ下ろしが苦にならない年齢なのと、普段から上げ下ろしで体を使っていれば、腰の運動にもなって高齢化対策にもなるとの考えもあるようです。こういう場合は和室というよりも、フローリングの替わりに畳を敷いた部屋という感じが強く、布団をしまう押入は計画しますが化粧柱や鴨居はつくりません。昼間はお花の稽古に使ったり、冬はこたつを出してお客様をもてなしたり、子供たちが友達を連れて来たときは臨時の遊び部屋になったりしています。
畳敷きのファジーな部屋、これからの住まいには魅力ある空間だと思います。
【写真左】ロフトへの階段下の、足を入れられる座卓と畳の床。畳の上に気持ちよく座れる
【写真中】階段下に作った30cm上がった畳コーナー
【写真右】茶の間。一段上がった畳の下は収納になっています。化粧柱も鴨居も付けていませんので、和室というより、畳コーナーです。天井は地元の飯能西川材の杉です。照明のカバーも杉で制作しています。
【写真左】腰掛けたり寝転んだり。くつろぎ空間となる、一段上がった小さな畳コーナー
【写真右】畳を落とし込みにしたリビング。半畳の畳を市松模様に敷き込んでいる