見直しの住居学1:続き間を見直そう
昔の住まいでは、続き間といって和室2間を連続して配置して、祝事や法事など、来客の多いときに仕切りの建具を取り払い大きなワンルームとして使うということがよく行われていました。
しかし現在では、祝事にしても仏事にしても、町の専門の施設を利用して簡単にできるようになっています。だから多人数の来客に備えて続き間をつくる必要はないようです。もっと積極的にこの続き間の良さを生かす工夫があってもよいと思っています。
たとえば、和と洋の続き間。上の写真の例のように、家族が毎日使うリビングに続けて畳のスペースを用意し、障子などで仕切るようにします。障子は引き込みにして、使わないときは壁の中に納めておくようにします。和室は寝室として使っている。朝起きて布団を押入に入れて掃き清め、障子を壁に引き込むと、リビングの続き間として多目的に利用できる。
こうすると障子の出し入れひとつで、リビング全体を広くも狭くも使うことができます。不意のお客様にも柔軟に対応できるだけでなく、住まいの雰囲気を和と洋に変えて楽しむこともできます。
畳のほうの部屋の床を少し上げて、そこを腰掛け替わりにするもよし、写真の例のように引き出し収納にして畳下を有効利用することもできます。堀りこたつやちょっとした床柱風の柱を計画したりすれば、落ち着いた雰囲気の和室兼客間にもなります。
タテの続き間というケースもあります。敷地が狭くて限られたスペースで住宅を計画する場合に、住まいに光や風を取り入れたり、空間をのびやかに演出する一つの方法として吹き抜けをよく計画します。この吹き抜けは、考えようによってはタテの続き間と言えます。
玄関と2階廊下、居間と2階の階段ホール、リビングと書斎や趣味の部屋、子供室と屋根裏部屋などを各々の視線がまじわるように計画すれば視覚的なタテの続き間となり、住まいの中にゆとりが生まれます。上下の階が空間的に結ばれることにより風通しのよい明るい住まいにもなります。
さらに、外部との続き間も考えられます。リビングの外に木の板でデッキをつくり、外のリビングのように計画すれば、休日のブランチの場所になるし、日曜大工も楽しくできます。子供たちの花火やプール遊びの場にもなります。
この場合大切なのはリビングとデッキの床の高さを同じにすることです。こうすると内のリビング外のリビングという続き間の良さが生きてきます。さらにデッキのスペースを外壁で囲み込んだり、植栽を施したり、バーベキューのコーナーを作ったりすれば工夫次第で、楽しい夢のある続き間になるはずです。
昔の続き間のよい点を積極的に採り入れて現代の新しい続き間を工夫すると住まいはもっと楽しくなると思います。
【写真左】タテの続き間。リビングにはね出したロフトがリビングの続き間として住まいにゆとりをもたらす
【写真右上】和と洋の続き間。引き込みの障子を引き出すと個室空間になる
【写真右下】障子の開閉で広くも狭くも使える
【写真左】リビングとデッキテラス。木製のガラス戸を引き込むと外のテラスと内のリビングが一体の空間として利用できます。工夫次第でアウトドアリビングとして楽しく使えます。
【写真右】外部からの視線を遮断するカナダ杉の塀で囲んだデッキテラス