私の好きな文庫本21　義経

今日は源義経に関わるお話です。

昨年から鎌倉市の小さな住宅の設計をしています。6月ごろから工事がはじまる予定です。鎌倉山の傾斜地の敷地からは南西に江ノ島と富士山を見ることができます。

鎌倉から連想するのは源義経のお話しです。

源義経のお話は日本人はみんなが大好きなようです。鞍馬山の修行時代や京の五条大橋での弁慶との逸話、平家との戦い、頼朝との確執、静御前との恋、奥州への逃避行、平泉での最後と劇的なシーンの連続の人生だったからでしょうか。

歌舞伎の「勧進帳」などは江戸時代からの人気の演目になっています。主人の義経を逃がすために、弁慶が小者に扮した義経を打擲する場面が見せ場になっていて、私も大好きな舞台です。

義経が「一ノ谷の逆落とし」という騎馬による独創的な奇襲作戦で平家を破ります。日本の歴史で騎馬が歴史を転換した例は2つしかないと司馬遼太郎は著書で云っています。1つはこの義経の一ノ谷の逆落としです。もう1つは信長の「桶狭間の戦い」です。桶狭間も騎馬による奇襲作戦が成功したものです。馬に乗ってスピードを生かして、敵が油断をしているところを少数で奇襲するというのが騎馬作戦の要のようで、その作戦を思いついて実行した義経の戦略家としての才能は信長以上だったようです。

そんな戦略家として才能に溢れた義経一人の活躍で平家滅亡という結果になり、兄の頼朝は弟の存在が疎ましくなります。義経には兄に対する政治的な配慮というものがなかったようです。平家に勝利すれば兄に喜んでもらえるという思いで猛進し、結果的に兄から疎まれ、鎌倉にも入れてもらえず、死に追いやられます。

その最後が多くの人の同情を引き、判官贔屓（ほうがんびいき）という言葉を産み、たくさんの伝説や物語になっています。

こちらの一所懸命の思いが相手に伝わらなくて残念ながら想定外のことになってしまう、人の感情のすれ違いというものはいつの世の中にもよくある出来事なのかも知れません。

そんな訳で今日のおすすめ文庫本は

「義経」　文春文庫（全2冊）　司馬遼太郎