私の好きな文庫本07

今日は2000年に山梨県甲府市に完成したＴさんの住宅から…。
Tさんは私の母方の親戚です。そんなご縁で住宅の設計のお手伝いをさせていただきました。

さて、甲府といえば武田信玄ですね。駅前には信玄の銅像もあります。信玄は越後の上杉謙信と犬猿の仲で度重なる争いをしていますが、もし謙信との争いがなければ後顧の憂いなく上洛を果たして、天下統一を果たしていたのではともいわれています。

織田信長も信玄が上洛をするとなると尾張がその通り道になり信玄との戦になるということで信玄の上洛を恐れていました。

今日のお話はその信玄ではなくて、信玄病死のあとに武田家を継ぎ、「長篠の戦い」で、武田家を滅亡させることになる信玄の後嗣、武田勝頼のお話です。

武田家の軍団は兜や鎧、指し物などを全て朱色で揃え、その赤い騎馬軍団は当時最強といわれて恐れられていました。信玄亡き後、武田家を継いだ勝頼は、その騎馬軍団で織田・徳川連合軍と長篠で対峙します。

このとき織田・徳川軍が日本の戦史上初めて使用したのが3000丁の鉄砲といわれています。火縄銃で発砲に時間を要する分を最短にするための工夫として信長があみ出した戦法が3段うちで、3人一組で1000丁が替わり番に発砲する方法でした。武田の旧い騎馬軍団はこの新しい時代の鉄砲の圧倒的な威力の前に壊滅します。

武田信玄亡き後をテーマにした黒沢明監督の映画「影武者」の迫力あるスローモーションの映像で記憶に残っている方も多いと思います。この映画では萩原健一（ショーケン）さんが勝頼の役を演じていて、家臣の箴言を無視して破滅に突き進む若武者の勝頼を好演していました。

勝頼は甲府、韮崎、大月と逃れますが、最後は信頼していた家臣に裏切られて自刃をします。最強といわれた武田軍団は家康の旗本の井伊直政の家臣団となり、井伊の「赤備え」として徳川家で勇名を馳せていくことになります。

新しい時代の流れについていくことの大切さと難しさの両面を考えさせる、そんな小説です。

　＊＊＊そんな訳で今日のおすすめ文庫本は…＊＊＊
　　　「武田勝頼」（全3冊）新田次郎（講談社文庫）