見直しの住居学（その11）

■自然のエネルギーを使う
二酸化炭素の大量廃棄による地球の温暖化がすすんでいます。二酸化炭素などを排出する化石燃料に代わる新エネルギーへの移行がいま模索されています。

7年前に環境先進国といわれているドイツに行きました。印象的だったのは、アウトバーンの高速バスからみた風力発電のおおきな羽根が何基も立ち並んでいる風景です。高さ100ｍくらいの巨大な風車が丘の上でゆっくり回っている姿は、まるで近未来の風景のように思えて不思議な気持ちだったのを覚えています。寒い気候だからなのだろう、南にガラスの温室を設けて、そこに採り入れた太陽の恩恵を、住まいの暖房に利用している住まいもたくさんありました。雨水をタンクに貯めて洗濯水やトイレの排水などに使っていたりもしています。そこに共通しているのは、自然の恵みを有効に利用していることです。

日本はドイツよりも日照時間は恵まれているし、雨も多い。ドイツよりも自然のエネルギーを利用しやすい環境にあります。これからはもっと、自然エネルギーを有効に利用することを考えることが大切だと思います。

屋根にガラス真空管式のソーラーシステムを設置した住まいを設計しています。太陽の熱で作ったお湯を、石油やガスの給湯器に戻す。天気が悪くて温度が上がっていないときだけボイラーに着火して暖め直す。天気のよい日や夏場は、水で薄めなければ熱いくらいのお湯がとれます。このお湯を、浴室、シャワー、洗面所、台所に使っていますが、石油やガスの消費量が格段に少なくて済みます。

雨水の有効利用を考えて、雨水を2トンのタンクに溜めてトイレの流し水に利用する住まいも設計しました。家族5人の住まいで1年のうち270日くらいのトイレは雨水で流すことができています。全体から見れば大した量ではないかも知れないが水道水を無駄に使わなくて済むのです。

ソーラーシステムなどを採用しても元を取るのに何年もかかるし、その間にシステムそのものが壊れてしまうのでちっとも家計は助からないという人もいます。確かにその通りかも知れませんが、大切なのは太陽や雨、風といった自然のエネルギーを有効に利用して行こうという姿勢なのです。晴れた日には太陽光で電気を作っているので何か嬉しいような楽しい気分になる。雨の日も嬉しくて、風が強い日にもやっぱり嬉しいと思える価値観が大切なのです。自然のエネルギーを有効に使うことを意識すれば、個人の小さな力でも、ほんの少し地球を健康にすることはできるのです。

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